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二〇XX年七月七日、新都ドームは全国から押し寄せた五万人余りのファンで沸いていた。国民的アイドル・みこりんのデビュー七周年目の誕生祭が開かれており、しかもデビュー以来初の水着姿のお披露目も控えているのだ。
「みんな〜!おっは〜みこ〜!」
鈴の声が響き、ステージ上にパステルカラーのラップタオルを巻いた巫女が現れると、信者たちは最大のボルテージでコールで会場を震わせる。
「おっは〜みこ〜!」
「今日は来てくれてありがと〜! 初めてここに立ってから、七年も経つんだね! ずっとここで歌ってこられたのは、愛してくれた皆んなのおかげだよ〜! サンキュー ラビューオール!」
信奉する巫女の感謝の御言葉に、割れんばかりの拍手と歓声で応える信者たち。
「さて、ライブを始める前に、皆様に大切な発表があります……」
先ほどの無邪気さから打って変わり事務的なその口調に、会場はどよめきに包まれた。
(何? 引退じゃないよね?)
(え、結婚ってこと?)
(やめてくれ!)
(ってか、こういうのって、歌った後じゃないの?)
「実は私…」
彼女は胴体に巻き付けていたタオルをほどく。不意に現れた南国色のフリルビキニーー待ちに待ったその水着姿に会場上が釘付けになった。
静まり返る会場で、彼女は辿々しく言葉を紡ぐ。
「私……ビテーコツが……その、伸び続けていて……生まれた時からーーー」
ポツポツとそぼ降るその言の葉を、信者たちはすぐには理解できなかったようだ。
(何が伸びてるって? 映画制作の件?)
(保津監督の戦国ものならとっくにお蔵入りしただろ)
(なになに? 子供時代の思い出話? 「びてーこ」ってなに?)
「つまりは私……」
彼女は口をつぐむと、ざわめくファン達にくるりと背を向けた。瞬間、大型スクリーンに映し出された光景に信者たちは仰天した。巫女の臀部から、肌色の突起物が不気味に伸びていたのだーー。
「『しっぽ』があるんですーー!!」
突如投下されたその爆弾発言は強烈な爆風を生み、あらゆる分野に大きな衝撃を与えた。
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