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パーティーで響く銃声
警察庁祓魔課の消滅 毒蛇姫と蒼天のスターレス邂逅編新装版
奥秩父に、とある洋館が人知れず存在していた。
マダムルーリーと呼ばれてる人物の館だった。
急峻な崖に、へばりつくように屹立している奇妙な家として知られていた。
このマダムルーリー、篤志家として知られていて、彼女の財で人生が好転した者は、枚挙に暇がなかった。
多くの者が、彼女の慈愛と、高潔な精神に敬意を払うようになっていた。
その日、ささやかなパーティーが催された。
マダムルーリーへの感謝の気持ちを、表する為のパーティーだった。
出席者は約100名。かつて、彼女の優しさに触れた、資産家達が開いたものとあって、あまり彼女は望まなかったものの、華燭の典を思わせる、かなり華やかなものとなっていた。
我々を見守り、育んだマダムに。
マダムに。
掲げられた杯が、ガシャンと音を立てた。
同時に、出席者は一様に、その、乾いた破裂音を耳にしていた。
「きゃあああああ!この人、誰?!」
出席者は、被害者のことを全く知らなかった。
慌ただしく、洋館には警視庁の殺人課の、機捜に鑑識、科捜研のスタッフが入り乱れていた。
彼等の頭上に、けたたましいローター音が谺した。
30を過ぎた、とある係長は、そのヘリに、苦々しい視線を向けていた。
「祓魔課共――め」
状況は、聞いた通りだ。勘解由小路。
親友にして上司でもある、祓魔課長島原雪次に言われて、祓魔課の切り札は、面倒臭そうで、それでいて不機嫌だった。
「島原ー。もういいだろう?こういう事件は、警視庁の管轄だろうに。こっちは夏休みの最後を、ベルギーでしっぽり過ごしたのにさ。酷いことになった。まあ主に、着いて早々真琴が生理始まっちゃったってことだ。シクシク泣く真琴を必死に励ましたのに、何とエリーナが現れちゃったんだぞ?エリーナってのはだな」
「こちらも何遍言ったのか。軽々しく海外に行くなというのにお前は。エリーナ?エリーナ・ノバチェクのことか?今はベルズィックか。5度目の再婚をした女優だろう?大学時代、家に帰ると、壁に手をついた彼女の尻に、腰を打ち付けていたな」
おー。お。島原帰りー。ちょっと待ってろー。今出すからー。あーエリーナ、スラーイド♡
エリーナはヒンヒン言っていた。
まあ、今更ではあった。こいつの女性遍歴については。
「ベルギー王室入りしたんだろう?大丈夫だったのか?」
普通に考えて、日白戦争勃発の危機だった。
「まあ、真琴凄かったんだぞ?わんさかいたボディーガードは、誰1人近付けなかった。エリーナはエリーナで王族で、女優だったプライドがあってだな?さながら火気厳禁の花火工場で、ハワイアーンなファイアーダンスがおっ始まったみたいだった。まあ俺はその時、遠目で見てたベルギー王子って穴兄弟と楽しく話してたぞ?結果、ドイツの城もらっちゃった。眼鏡と真帆坊連れて行ってこい。トキに頼めば、国賓扱いで入れるぞ?」
「もう、新学期始まるぞ?」
「だからさ。真帆坊は宿題ちゃんとやってるだろうに。9月の頭、ドイツで過ごしても何の問題もあるまい」
「考えておく。それには、今事態の早急な解決が嚆矢だ。銃撃事件が、パーティーの最中に起きて、誰1人被害者を知らないらしいのでな?今、神楽坂君が車で向かっている」
「何か、オンリーのイベントがあったそうだぞ?」
オンリーって、何だ?
ヘリが、庭に着陸した。
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