リムジンで抱擁

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リムジンで抱擁

 リムジンに、可愛らしいアンティーク人形が座っていた。  当初、リムジンは真琴の腕力で凹みが凄かったのだが、星無が、スーッと撫でただけで、新車同様のピカピカボディーになっていた。 「話を聞く限り、相手は魔女。それも、強い破滅願望の持ち主よ?消失の魔術は、貴女の旦那さんを消そうとしたのだけれど、同時に強い力を感じてる。多分、貴女――勘解由小路さんの、旦那様の力ね?話を聞く限り、旦那様は魔女の力の一端を、既に掴んでいる。知り合いに、魔女とか、いないかしら?」 「さあ?私は知りませんが」  とりあえず、水晶堂の中だけが、彼女の姿を変容せしめるようだった。逆に、リムジンの中は、星無にとって居心地が、あまりよくなさそうだった。  志保は、霊異についてはさほど詳しくはないが、彼女の方が、ここでは異端だったのだろう。  店の中より、人形に近かった。  でも――このグラスアイ、本当に綺麗。 「とりあえず、現場に向かいましょう?あら?」 「何か、やっぱり空襲警報みたいな音が」 「そうだわ。今日は、まだ何も食べていないから」 「お願いだから、私達を食べないでね?」  水晶堂を出る際、四月一日君に、しつこいほど言われたのだった。 「いいか星無!この人達を絶対食うなよ?!いいか?!ああ!保孝どこ行った?!」 「四月一日君は、多分、釣りに行くわね?保孝君も紅葉さんも、クリークウッドも、釣る気満々だったもの。真宵堂――というより、Kファクトリーの釣りアホばっかりだもの」 「――誰?なの?」 「ケージにいたヤモリさんと猫さんよ。保孝君も、紅葉さんも、私に大鍋を押さえられて、今ではそんな姿になった。クリークウッドは、今はジャスターになってるけど、蓋を開ければ、釣りアホの師匠だもの。きっと、カッパとか釣って帰って来るでしょうね?」  何が何だか。やっぱり、あっち側も奇々怪々ねえ。  志保は、コッソリ呆れていた。 「真琴さん、現場に向かっていいの?真琴さん?」  ずっと前を向いていた真琴は、ポロポロと泣き出した。 「降魔さんが――無事で、本当によかった。降魔さんがいなくなってしまったら――もう心配で心配で」 「ああもう。泣かないで真琴さん。私だって、ううぇえええええん」  抱き合って、泣いている人妻達がいた。  そんな2人を、グーグー言いながら、星無はじっと見ていた。
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