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次の日。緊張からか、私は朝早くに目が覚めてしまった。そのため簡単に部屋の掃除をすることにした。
掃除を終え、私は寝室に入ってタンスを開けた。一番上にはダイヤモンドの婚約指輪が入っている。これは、いい雰囲気になったらプロポーズすると決めた。
真奈と私は親同士で決めた婚約者だが、私たちは何回か会って話をしていくうちに、互いに惹かれ合っていた。最初は、勝手に決めた婚約者に困惑したが、今となっては親に感謝だ。
指輪を見つめながら真奈との思い出に浸っていると、インターホンが鳴った。誰だとモニターを見ると真奈が立っていた。
「真奈?早いな。どうしたんだ?」
「早く来ちゃった。……入ってもいい?外、寒くて」
「ああ、ごめん。すぐ開ける」
私は指輪を仕舞ったあと解錠ボタンを押して、真奈をマンションの中に招き入れた。
どうしたんだろう。まさか、プロポーズする前の緊張感が真奈まで届いたのだろうか。そんなおかしなことを考えていると、部屋のインターホンが鳴る。
「いらっしゃ……」
ドアを開けると、真奈が何かを振り下ろしてきた。私は驚きながらも咄嗟に後ろに下がって避ける。
「なっ、真奈!?」
私は真奈が振り下ろした物を見た。手に持っていたのは刃物だった。
「刃物!?何でこんな物持ってるんだ!」
「あなたが悪いのよ!浮気してたなんて最低!」
「浮気なんてしてない。私が愛しているのは真奈だけだよ」
私がそう言っても真奈は首を横に振って、睨みつけてきた。
「嘘よ。目撃した人がいたの『綾人が他の女といるところを見た』って」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「そんなのどうでもいい!それより部屋に入れてよ!」
私は落ち着かせてから入れたかったため、玄関で真奈を宥め続けた。
「なんで入れてくれないのよ!今、他の女がいるからでしょ!あなたもそいつも殺してやる!」
駄目だ。落ち着かせることは難しそうだと思った私は、刃物を取り上げることに切り替えた。
しばらく刃物の奪い合いをしていると、私を突き飛ばそうとしたのか、真奈が体当たりしてきた。だが彼女のその動きで最悪なことが起こった。
刃物が、真奈のお腹に深く刺さってしまったのだ。
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