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宏哉が笑ったのは私の気のせいではないと分かったのは三十分後、刑事のふりして部屋に入ってきた、探偵とその助手によって知らされた。
私を嫌っていた宏哉が刃物を買って真奈を呼び出し、私が真奈を殺害するように誘導させたということらしい。
衝撃の真実に驚きもしたが、ああやっぱりか、と納得もしてしまった。宏哉が誘導したことを許すことはできないが、私が真奈を殺害してしまった事実は変わらない。
私は睨み合いをし始めた二人に、自首することを告げた。だが二人に止められ、そして、探偵の新藤結希さんが続けて言った内容に私は驚かされた。
なんと社員のみんなが、私にはアリバイがあったと嘘の証言をしたというのだ。
「みんなが……、そんな証言を……」
「この話を聞いても、鏑木さんはまだ自首しようと思ってますか?」
社員のみんなは大切な存在だ。だが宏哉のことも、完全に憎むことができない大切な家族だ。
「私は一体、どうすれば……」
私の問いかけに新藤さんは、最終判断は自分で決めてくださいと言った。
ならば私は、守ってくれた社員に寄り添おうと決めた。私がそう言うと、新藤さんは力強く頷いた。だが一つ話があると言ってこう尋ねてきた。
「鏑木さんが川野さんを殺害した事実は変わりません。ここで質問です。あなたはこれから先も、その罪と向き合う覚悟はありますか?」
新藤さんの言うとおり、私が真奈を殺害してしまった事実は変わらない。私はずっと向き合っていくつもりだ。私は頷いて答えた。
「はい。私はこの罪と向き合う覚悟はできています」
そう答えると、新藤さんは微笑んだ。そしてこれから仕事をする彼女は、何もせず、じっとするように指示すると、助手の高谷さんを残して出ていった。
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