3、真の正義は【複数視点】

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【side津雲明日香(つぐもあすか)】  ある日の午後。わたしは待ち合わせ場所のカフェに向かって歩いていた。  そして到着して周りを見渡すと、奥の席で手を振る人物がいた。わたしはそこに向かい声を掛ける。 「こんにちは。新藤さん」 「津雲さん、こんにちは。急に呼び出してすみません」 「いえ。今日は特に予定がなかったので」  わたしは、そう返しながら向かいの席に座った。そして、やってきた店員さんにコーヒーを頼んだ。  店員さんがいなくなると、新藤さんはカバンをゴソゴソし始めた。早速わたしを呼んだ本題に入るようだ。 「知り合いの警察に頼んで返してもらいました。これは津雲さんのものですから」  そう言って新藤さんは、テーブルの上に乗せてわたしの方へ滑らせた。  わたしはそれを手に取る。手にフィットする、そのひんやりした感触に懐かしさを覚え、久しぶりに友人に出会えたような気分になった。  新藤さんは頬杖をついて、そんなわたしの様子をじっと見つめていた。 「よかったですね。小型カメラが戻ってきて」 「はい。わたしにとっては大切な商売道具だったので」  よく見るとカメラの側面には傷がついている。  それを見つけたわたしは、あのときの出来事を思い出してしまった。  あの日。わたしが研究の資料を小型カメラでデータを撮っていると揉める声が聞こえ、その後小型カメラを落としてしまったときのこと。 「や、安岡(やすおか)さん!大丈夫ですか!?」  安岡さんが胸を刺されたとき、わたしは駆け寄ってそう訊いた。だが彼からの返事はなく、苦しそうな呼吸を繰り返していた。 「おい、今は警察呼ぶなよ。というか、呼ばれて立ち位置が危ないのはお前の方か」  わたしの後ろに立って様子を見ていた原山(はらやま)は、わたしを上から見おろして言った。  そんな彼の足元に、わたしの小型カメラが落ちていることに気づく。取りに行こうとしたが、その前に原山がその存在に気づき、彼はカメラの上に足を置いた。 「これ、お前の大事な物か?こんな物落とすなんてマヌケだな」  そして原山はカメラを踏む足に力を込めた。 「やめて!」  簡単に壊れるものではないけど、力を込められると壊れてしまう。
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