3、真の正義は【複数視点】

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 わたしの必死の叫びがよかったのか、原山はあっさりと足をどけた。そして彼はカメラを拾う。そのときに彼の背中から血が流れていることに気づく。 「血、出てますけど……」  わたしの言葉に、原山は背中の方に目を向けた。 「大したことない切り傷だ」  原山はカメラをじっと見つめながら訊いてくる。 「それよりこれって、俺たちの研究データも入ってるのか?」  わたしが黙っていると、彼はカメラを振りかざした。 「待ってください!答えますから!データは入ってます。全部」 「ふーん」  原山はカメラを見つめ、その後ニヤリと笑った。 「なるほどな。それじゃ、このカメラはしばらく俺が預かっておく」 「な、何でですか!返してください!」 「返してほしければ、今から俺が言うことをお前にしてもらう。まずはここから去って、弁護士のところに行け。で、安岡を殺したのは自分だと伝えるんだ。全て無事に解決したら、これを返してやる」  わたしにとって小型カメラは、大切な相棒のような存在なのだ。カメラを取り返すには、この男の言う通りに行動するしかない。わたしは立ち上がって弁護士事務所へ向かった。  だがそこで牧野(まきの)さんと新藤さんと出会い、原山の本性を見抜き、わたしは捕まらず助かった。 「津雲さん。ぼーっとしてますけど、大丈夫ですか?」  新藤さんの声ではっとする。そうだ。ここは研究室じゃなくて平和なカフェだった。そしていつの間にか注文していたコーヒーが置かれていた。 「えぇ、大丈夫です。久しぶりにカメラを見たので、あのときのことを思い出しちゃって」  コーヒーを飲むわたしを、新藤さんはじっと見てくる。そしてテーブルの上で手を組んだ。 「今回、私がカメラを津雲さんに返したのは、もうデータを盗む仕事をしないと思ったからなのですが……。まさか、またあの仕事をしようと思ってないですよね?」  新藤さんの言葉に、わたしは笑って首を横に振った。そして小型カメラを見つめる。 「しませんよ。これからこの子には、わたしが新しい仕事で輝くところを見ていてもらおうと思っているので」  わたしの決意に、カメラのレンズがキラリと光る。それは『頑張れ』と言っているような気がした。 【side津雲明日香】〜完〜
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