17人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺は周辺の防犯カメラを調べてくるから、田邊は怪しい人物がいなかったか聞き込みを頼む」
「はい。……放火の線で調べるんですね」
先輩は頷き、周りに指示すると出ていった。その先輩と入れ違うようにして、結希と高谷くんがやって来た。
そして僕はキーホルダーについて話そうとしたが、その前に結希から一年前の事件の防犯カメラを見せてほしいと言ってきた。
「それは散々見せただろ。駄目だ」
「もう少しで思い出しそうなんだ。あのとき何があったのかを」
「それは思い出さなくていい!」
記憶障害を患うほどの出来事を結希は思い出そうとしている。僕はあんな辛いことを思い出してほしくない一心で語気を強めて否定した。だがそれは逆効果だった。
「やっぱり。雅人はあの事故について何か知ってるんだね」
結希に詰め寄られたが僕は強引に話題をそらし、キーホルダーを二人に見せた。このキーホルダーを高谷くんが知っていたらと思い渡したが、彼は首を横に振った。
「俺は見たことないです。でもそれって3Dキーホルダーじゃないですか?よく土産屋で売られている」
僕はキーホルダーを見つめる。何か書かれているなとじっと見ていると、黙っていた結希がポツリと言った。
「それさ、私の大学時代に作ったキーホルダーだよ。みんなで思い出の物作ろうって話になって作ったやつ」
彼女の言葉に僕たちは驚き、キーホルダーを見る。よく見るとRという文字が書かれていて、それが勝呂凛のRだということが判明した。
僕は急いで勝呂に電話をかけるが、全く繋がらない。
イライラしながら電話をかけ続けていると、結希の方に動きがあった。どうやら勝呂が病室に現れたらしい。何故そんなところに?
僕が話を聞きたくて結希の周りをうろつくが、彼女はこちらを見向きもせず、高谷くんと話し合った。そして彼女はそのまま走って行ってしまった。
「待て勝呂は一体何を……って、おい!」
高谷くんに聞こうとしたが、彼は小さく頭を下げてすぐに結希を追いかけていった。
「ちゃんと教えろ!報・連・相!」
そんな僕の声は虚しく冬空に消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!