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その後、こちらは大きな動きはなく、放火犯の目撃情報もなかった。
しばらく情報収集をしていると、高谷くんが走って戻ってくる姿が見えた。その隣は結希ではなく勝呂だった。全力で走ってきたのか、二人は息があがっていた。
「勝呂!高谷くん!……大丈夫か?」
二人のもとに駆け寄ると、勝呂がショルダーバッグを僕に押し付けてきた。そして橘を捕まえられる資料が入っていると言った。
僕は受け取って中身を確認すると、闇ルートや違法な売買された資料が載っていた。
そして今、彼がいるところを尋ねると、勝呂が地図アプリで教えてくれた。どうやらプレハブ小屋にいるらしい。
「なるほど。でもこれは応援が必要だな。他の事件などで大人数は動かせないが、できるだけ多く集めるよ」
僕がそう言うと、高谷くんは大きく頷いた。
僕は高谷くんが戻る前に、勝呂から少し離れて訊いた。
「勝呂は放火を認めたのか?」
「あ、はい。他人の家に火をつけてしまったと。ですが結希が勝呂さんを救おうとしています」
勝呂が放火を認め、結希が救おうとしているなら、僕は全力でフォローに回ろうと思う。
高谷くんは一歩下がり、深く頭を下げた。
「そろそろ俺は戻ります。橘さんの件、よろしくお願いします」
高谷くんは本当にしっかりした子だ。結希はいい人を見つけたなと改めて思う。僕は彼のために、この事件にけりをつけてやろうと心に決めた。
できる限り集めた人数で、プレハブ小屋に向かっていた。隣では殺気オーラーが出ている勝呂がいて、僕は彼女を気づかいながら先頭を歩いていた。
何とか到着し、僕はドアをノックしようと手を上げる。だがノックする前に扉が開き、橘本人が出てきた。写真でも思ったが、生で見た彼はめちゃくちゃイケメンだ。腹が立つぐらいに。その彼は僕を見て微笑んだ。
「分かってますよ。私を逮捕しに来たのでしょう?もうここまでかなと思っていました。逃げも隠れもしません。行きましょう」
と、何故か橘が先陣きって歩き出した。僕は彼を押しのけ前を歩く。
かなりあっさりした逮捕劇に驚いてしまったが、まあ逮捕できたならいいかと無理やり自分を納得させた。
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