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日が沈み始めて、輝の姿は見え隠れしていた。このまま彼は警察のところに行くのだろうと、僕は思っていた。だが彼はビルへと向かっていった。
「あいつ何がしたいんだよ」
リーダーの言葉に僕も同じことを思った。警察に行かないのか?
そんな疑問を持ちながら、僕たちもビルに駆け込む。輝は僕たちが駆け込んだと同時に、ガシャンと柵の扉を閉じ、南京錠をかけた。リーダーがすぐさま近づき、柵をガタガタ揺らすがびくともしない。
「輝!てめぇ、こんなことして命が助かるなんて思うなよ!」
輝は階段を登り始めていたが、リーダーの言葉に足を止めて振り返った。
「そんなことは分かってる」
そう静かに告げると、カバンを担ぎ直して階段を登っていった。
輝の姿が見えなくなると、リーダーは振り返って僕の胸ぐらを掴んできた。
「冬馬!何故撃たなかった!チャンスはあっただろうが!」
そして僕は頬を殴られる。その後、腹や頬を何度も殴られ、意識が薄れ始めた。
父さんの治療費のために組に入ったけど、それは間違っていたんだな……。ごめん、父さん。僕は死を覚悟してリーダーが振り上げた拳を見つめる。すると、
「とりゃあ!」
というかけ声とともに、リーダーは横に倒れた。急に現れた人物は女性で、空中回し蹴りをしたようだ。飛んでいた彼女は着地すると、次々と襲いかかってくる奴らを無駄のない動きで倒していった。その俊敏な動きは猫のようだ。
すると最初に蹴られたリーダーが立ち上がり、女性に向かって刃物を向けた。
「へぇ、刃物使うんだ。それがないと私に勝てないんだね」
「なんだと!」
女性の煽りに、リーダーは刃物を捨てて襲いかかった。それを見た女性はふっと笑うと、飛んでくる拳を簡単に受け止めて手首を思いっきり捻り上げると、背後に回って蹴飛ばした。
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