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その後警察がやってきて、転がったままの奴らと一緒にパトカーに乗った。しかし僕には同席者がおらず、一人だった。
一緒のパトカーに乗っているスーツ姿の警察が、振り返って僕を見た。
「冬馬くんだよな?僕は君を救うために来た田邊雅人だ。よろしく」
「あ、よろしくお願いします」
僕が頭を下げると、田邊さんは小さく頷いた。
「本来なら君も警察署に行って、色々聞かないといけないんだが、予定外のことがあったから今ここで尋問する。君がこのカバンとお札を持っていた理由は?」
「えっと……。そのお札は詐欺とかで手に入れたもので、僕は友人が足止めしてくれている間に、そのカバンを使ってばらまきました」
田邊さんはじっと僕を見て頷く。その後彼は、目つきを鋭くさせて訊いてきた。
「ところで君は、その詐欺とかに関わったことはあるのかな?」
「ないです。一度も」
僕も田邊さんの目を見てしっかりと答えた。すると彼は、鋭かった目つきを緩めて微笑んだ。
「分かった。先にあいつからやっていないことは聞いていたんだが、こちらも仕事だから聴取しないといけなくてな。二度手間になって悪いね」
「いえ……」
怖い人かと思ったが、僕の心配までしてくれる優しい人で良かったと安心した。ほっとしていると、田邊さんのスマホが鳴った。彼は僕に断りを入れてから電話に出た。
「千紘。もう少し待ってくれ。こっちも急ピッチで……、分かった分かったよ、行けばいいんだろ!」
乱暴に電話を切ると、田邊さんはシートベルトをしながら言った。
「結希と君の友人が格闘しているらしい。悪いけど、君を乗せたままそこに向かうから。あ、ちなみに新藤結希は君を救った探偵だから、彼女に会ったらお礼を言っておくんだよ」
「はい」
そして田邊さんが運転する車は、僕を乗せたまま出発した。
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