1、始まりはビルの屋上から【side冬馬】

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 その後警察がやってきて、転がったままの奴らと一緒にパトカーに乗った。しかし僕には同席者がおらず、一人だった。  一緒のパトカーに乗っているスーツ姿の警察が、振り返って僕を見た。 「冬馬くんだよな?僕は君を救うために来た田邊雅人(たなべまさと)だ。よろしく」 「あ、よろしくお願いします」  僕が頭を下げると、田邊さんは小さく頷いた。 「本来なら君も警察署に行って、色々聞かないといけないんだが、予定外のことがあったから今ここで尋問する。君がこのカバンとお札を持っていた理由は?」 「えっと……。そのお札は詐欺とかで手に入れたもので、僕は友人が足止めしてくれている間に、そのカバンを使ってばらまきました」  田邊さんはじっと僕を見て頷く。その後彼は、目つきを鋭くさせて訊いてきた。 「ところで君は、その詐欺とかに関わったことはあるのかな?」 「ないです。一度も」  僕も田邊さんの目を見てしっかりと答えた。すると彼は、鋭かった目つきを緩めて微笑んだ。 「分かった。先にあいつからやっていないことは聞いていたんだが、こちらも仕事だから聴取しないといけなくてな。二度手間になって悪いね」 「いえ……」  怖い人かと思ったが、僕の心配までしてくれる優しい人で良かったと安心した。ほっとしていると、田邊さんのスマホが鳴った。彼は僕に断りを入れてから電話に出た。 「千紘(ちひろ)。もう少し待ってくれ。こっちも急ピッチで……、分かった分かったよ、行けばいいんだろ!」  乱暴に電話を切ると、田邊さんはシートベルトをしながら言った。 「結希と君の友人が格闘しているらしい。悪いけど、君を乗せたままそこに向かうから。あ、ちなみに新藤結希(しんどうゆき)は君を救った探偵だから、彼女に会ったらお礼を言っておくんだよ」 「はい」  そして田邊さんが運転する車は、僕を乗せたまま出発した。
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