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ヴィルッダ王国は四季が豊かで比較的温暖な気候だ。特に辺境のほうは自然が豊かで、四季を存分に堪能することが出来る。
そんな国の辺境にある、エルバッハ伯爵領にて。
「……あぁ、また穴が空いているわ」
小さくそう呟いて、アネロアは子供用の衣服を見つめた。
「買い替えるお金もないから、また繕わなくちゃね……」
アネロアはシスターだ。エルバッハ伯爵領でも端に位置する地域にあるリンケ教会というところで働いている。
とはいっても、ここは教会とは名ばかりの場所である。ちょっとした事情があり、三ヶ月ほど前から神父は不在。今この教会を切り盛りしているのは、シスターであるアネロアただ一人。
それだけならば、まだいいのだろう。問題は……。
「姉ちゃん! またあいつがおもちゃとったの!」
駆けてきた幼い男の子を見て、アネロアは曖昧に笑った。
「本人に伝えたの?」
目線を男の子に合わせるためにしゃがめば、男の子はゆるゆると首を横に振った。
「だってあいつ、だれのはなしもきかないし……」
少ししょぼくれたような様子を見せた男の子の頭に、アネロアは自身の手のひらを置いた。
「だったとしても、きちんと話さなくてはダメよ。嫌なことは嫌だ。そう言って、対話することをあきらめてはダメ」
「……うん」
「それでも無理なら、もう一度こっちに来て頂戴」
安心させるように笑ってそう言えば、男の子は渋々といった風に子供たちの輪の中に戻っていった。
その姿を見つめて、アネロアの胸は痛む。
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