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第3話
ネオンの光が輝くのと同じように、県内でも有数の歓楽街と言われる街は、一層輝きを増す。この一画に、理沙の働くガールズバーがある。
仕事終わりのサラリーマンがちょっと寄る店というより、目当ての女の子に会うために行く店だ。そういう店が、何件も集まり、密集度だけで言えば、全国トップクラスだ。
そのため、同じような格好の女性が夕暮れと共に姿を見せはじめる。
そんないつもと変わり映えのないある夜のこと。
会社経営者で理沙の働く店の常連客である梅木康孝が、対面する店長のあかりに探るように聞いた。
「なぁ、あかりママ。リサちゃん可愛いのぅ」
「あら?梅木さんったら、私目当てで通ってると思ってたのに、リサのこと?」
「だいぶ前から見ちょった。……可愛い子じゃのぅって。もちろん、あかりママも素敵じゃ」
「ふふふ。ありがと。リサ、可愛いでしょ。私も大好きよ」
愛でるように里沙を見るあかり。
そんなあかりの言葉を聞きながらも、康孝の視線も理沙に注がれている。
「呼んでくるね」
「ちょ、その前に、聞きたいんじゃが、どうなん?」
「どうって聞かれても……」
「連れ出しても、ええかのぅ?」
「アフターのこと?まぁ、食事くらいならOKよ」
「じゃ、OKやね?口説き落としてもかまわん?」
「プライベートまでは口出しできないからね。でも理沙は彼氏いるよ」
その言葉も康孝には深入りするなという警告には聞こえていない。
彼氏がいるということなど康孝には関係ないのだ。
「へへへ。チャンスありじゃ」
広くない店内であるので、終始、康孝に舐めるように見続けられていたのは分かっていた。
理沙は、あかりに助けを求めるように、すぐ隣に立った。
何を言わなくても、不安がっているのは分かり、理沙の代わりにあかりが話はじめた。
「あ、リサ。梅木さんとお話、お願いね」
そう言いながら、康孝からは見えないところで理沙の服を引っ張り、離れないようにと合図を送るあかり。その意図は理沙に伝わり、その場から動くことなく康孝と話し出した。
「リサです。いつもママとお喋りしてるのに…ひょっとして私の魅力に気付いちゃいました?」
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