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すぐ隣に心強い味方がいる。不安がる方が不自然だと、他の客と分け隔てることなく接する理沙。その屈託のない笑顔も、その言い方も、康孝に好印象を与えている。
「リサちゃん。今日、何時で終わるん?」
「今日はラストまで」
「じゃ、終わったら付き合ってもらえる?」
「付き合うって?」
康孝に答えながらも、あかりの方を見て助けを求める理沙。
「変なことしちゃダメよ~」
茶化すように言うあかりに救われた。
同じように茶化す理沙。
「ですよ~。変なことナシですよ~」
康孝は、少し不機嫌な表情をしたが、声色までは変わらず、苦笑いながら答えた。
「おいおいおい。変なことってなんじゃぃ?この後、飯に行こうって意味じゃ。奢るけぇ」
それをそのまま信用するほど純粋ではない。
口約束なんてものは信用できない。
この仕事に就いてから里沙が身を持て覚えたことだ。
それであっても、せっかくの誘いだと思い、あかりの意見を聞く前に返事をした。
「ありがとう。じゃ、甘えようかな」
あかりとしては止めようと考えた。だが、理沙の防衛能力は知っているため、あえて里沙に任せた。
閉店の時間となり、康孝は理沙と共に店を出た。
あかりも、理沙が康孝と出るところを見ていたが、止めることはなかった。
だが、康孝には聞こえないように理沙の耳元で囁いた。
「リサ。分かってると思うけど用心して…大丈夫よね?」
「うん。大丈夫」
二人の会話は、これだけで、あかりは軽く手を振って理沙たちと逆方向へと帰っていった。
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