第3話

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 飲む気にはなれなかったが、断るのも違う気がして、友香の差し出すメニュー表を見た。 「じゃ、麦緑で」  言いながら、友香の正面に座る。 理沙の元に、麦焼酎の緑茶割が置かれると同時に、あかりが席に戻ってきた。 「お、リサ。おつかれ。私が仕返しするわよ」 「はい?」  何を言わなくても分かっていた。 あかりは、慌て震える声だった里沙の声から、心情を察していた。 電話越しに宥めることも出来たのだが、そうはしなかった。 あえて茶化すことで、少しでも理沙の気を晴らそうと考えていたのだ。 「酷いことされたんでしょ?ここまでくれば心配ないから」 「……言いたくない」 「さっきは茶化したけど、震えてる声で分かったわ」 「…最悪だよ!あんな人だとは思わなかった」 「大丈夫…大丈夫よ」  そう言い理沙の肩を優しく撫でたが、それよりも怒りの方が大きかった。 誰でもない自分に対しての怒りだ。 康孝から感じた少しばかりの違和感を野放しにした結果だ。 実妹のように可愛がる理沙を精神的に傷つけたのは、康孝だったが、それを止められなかった自分に腹が立っていた。 いつもと様子が違うあかりを見て、自分の行動を反省する理沙。 俯く理沙に、友香が聞いた。 「リサ。何があった?言える範囲で良いから教えて」 「やらせろって…」 「あぁ。よくあるやつね」 「……と」  声に出さず、嚙み締めた唇を手の甲で何度も拭う。 理沙から全てを聞かなくても、その仕草でやられたことは分かった。 友香はあかりに視線を刺した。 「だとさ。どうするつもり?」  怒鳴りつけるわけではない。あかりが答えやすいように、あえてゆっくりと静かに言った。 しかし、あかりがすぐに答えることはなかった。 友香と理沙が、あかりを見つめ答えを待つが、その二人を見ることなく、天井を見つめながら申し訳なさそうに答えるあかり。 「経営者って、何でも欲しがるのかな?そうだとしたら迂闊だったわ」 「いやいや。そうとは限らんだろ。そいつに問題ありだ」 「でも、常連だし…お店の売り上げに貢献する奴だし…少しならって…」  あかりの答えは、友香が想像していた答えの中でも悪い方の答えだった。 「そっちの答えか…ってバカだろ。キャスト売りばすようなことすんな」 これには、あかりも咄嗟に返した。
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