第2話

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第2話

 休み明けの月曜日。残業もなく、定時で仕事を終えたのと同時に、狙っていたかのように啓斗のスマホが鳴った。 親友である享からのメールだ。 『ケイト…今日で希子ちゃんラストなんで、一緒にプレゼント選んでくれん?』  話の本題を伝えることなく、いきなりこの文章からのスタート。 話の本題は、今までの日々の出来事から簡単にわかる。 当然のように啓斗はメールを返した。 『今、仕事終わった。行くわ。お前何処?』 『仕事休みやけぇ、家におる』 『てか、一人で行けれんのんか?』 『一緒に行こうや』 『夕方…てか、暗くなるまでに着くようにするけど、その時まで家におるんか?』 『とりあえず、本通りまで出るから、いつもの広場前で待っとく』 『オケ』  電話で話せば、なんやかんや話し込み、何時まで経っても話が終わらないことを分かっている二人は、メールで連絡をする方が多い。 メールも箇条書きではなく、話しかけるような文章だ。 実際、本通りの広場前で会うまでの間、全てメールでのやりとりだった。 「おう。ケイト」 待ち合わせ先に待っていた享が啓斗の姿を見つけ、片手をあげ、ここだと呼び止めた。 「お。で、どこ行くん?」  享に対して、待たせてごめんなどの言葉はない。 自分が遅れていくことに微塵も罪悪感のない啓斗だから、親友を待たせていようと平気なのである。 付き合いの長い享にしても啓斗のそれには慣れているから、そんなものだと気にもしない。 「考えたんじゃけど、ディオールとかどうじゃろ?希子ちゃん欲しいって言いよったけぇ」 「ええやん。それにしようや」  この日、啓斗と享は初めての会話。そうであるのに、さっきまで話していたかのような感じだ。すでにこの後の行動まで決まっているのだから、そう感じてしまうのもあり得ることかもしれない。  啓斗は、プレゼントを買うなら百貨店にしようと言い、それに享も賛成した。 プレゼントは、希子の好きなブランドの香水。 少し前に流行った歌みたいに、香りが思い出を残すという享なりの恰好つけだ。 ただ、その思いまでプレゼントするのは重くなるだろうと、意味は言わずに渡すことにした。
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