第2話

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「じゃけど、ここでリハしても想像の希子ちゃんじゃろ、出たとこ勝負にならんか?」 「ま、そうじゃけど、カッコつけたいなら、それなりのセリフいるじゃろ?」 「この流れで、それっぽいセリフ考えちょくか」 「最後じゃけ、ダサいくらいカッコつければ?」 「なんなんそれ?ダサいんかカッコいいんか分らんやろ」 「ま、ようするに、熱意。ハートだよハート。ハートトゥハート」 「お、おん。今のケイトが一番ダサい」 「ダサ…え?ま、やろ。リハやろ」 「なんでお前の方が必死なんよ」  結局、啓斗の熱意に押し切られ、寸劇のような喜劇のようなリハーサルは終わった。 すでに街は、夜の顔に変貌しており、啓斗と享は希子の店へと急いだ。 享は希子の店に出向くのは、今日で3日連続となる。 通いなれた店。自分の居場所である店に入るなり、希子の元へ一目散の享。 「キョウく~ん。三日連続!ラストまでありがとね~」 「おう。希子ちゃん。ホンマに今日で店辞めるん?ちょっとキビくなるわ」 「キビ?」 「あぁ、生活というか、精神的にキビしくなる」 「ははは。それ言うなら、寂しいじゃないの?」 「寂しいよりキビい……じゃね」  ここまではリハーサル通り。 ここからは、希子の出方で、リハーサル通りいかないかもしれない。 「この店大好きだけど、夢があるからね。それにチャレンジするんよ」 「夢って、この前言ってたやつやろ?」 「そ。夢は叶えるためにあるからね」 「うん。頑張って夢を叶えてな。これ、最後じゃけどプレゼント」 「えっ?あ、ありがと」 「じゃ、応援してるから、頑張ってな」  席に着くことなく、扉の方に向きを変える享の肩に希子は、優しく触れる。 「あれ?帰っちゃうの?ラストまでいてくれないん?」  心が揺れる。推しに哀願されて断るなどという選択肢はない。 そう思っていた。さっきまでは。 「う、うん。今じゃないと帰れんくなるけぇ」  希子は思いもしなかった享の言葉に驚いたが、店に来ているときの笑顔とは程遠い、真剣な表情に、それ以上引き止めなかった。 「そっか…そだね。分かった。ラストの日までありがとね」  閉店まで店に居座り、最後の最後まで希子と楽しく話すというリハーサルを啓斗としていた。
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