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○○チューバー
{Fコードの指の押さえ方さへ習得すれば、多くの楽曲で弾き語りが出来ますよ、さぁ頑張って!}
「Fコードって人差し指と中指、薬指に小指か? えっ!結局全部使うの? そんなの無理!」
{奥様に三日坊主って言われたくないんでしょ? 手の力を抜いて私の言う通りすれば三日もすれば弾けるようになります。さぁ、まずは薬指と小指を揃えて・・}
彼女には家内の事なんて話してもいないのにどうして? ましてや三日坊主の話だなんて・・あれは貴女が宅急便で運ばれて来る以前に発生した言葉だった筈だが?
・・・それから数週間後だった・・・
「お父さん⁉ お父さんって凄いよね⁉」
何年ぐらい前からだろうか・・お箸がこけても『凄い』って言葉が聴かれるようになったのは⁉ とくに若い女性の間ではまるでファッションのように使い熟している。
「えっ、何が? 何が凄いねん、儂の顔か?整い過ぎって言いたいんか?」
「それは前から・・違うがな⁉ ギター上手くなったなーって言うてんねん、ギター買ってまだ数週間や言うのに凄いやん!上手に聞こえてくるわ・・
誰かに習ってんの?」
一瞬ドキッとした、でも私自身も驚いているところだ、発声練習も指導してくれるし、無形な彼女にはさすがに手ほどきは無理なんだけど彼女の指導ってまるで魔法にかかったようなリラックス感で習えるんだ。そう家内と雑談してるような、あの空気感かな。
{あと一週間ほどで○○チューブに投稿しましょうね⁉}
「えっ、そんなん聞いてないよ、しかも顔見られるんやろ、そんなん恥ずかしいやん⁉」
{顔を映さないように録画すればいいんじゃない?}
(えっ、彼女も奈々子と同んなじこと言うとる、もしかして娘の奈々子が送り込んでくれた精霊なんかな?)
・・・・・・・・・
・・それから数週間後・・・
「お父さん、凄いやん、○○チューブの登録者数見てみ、凄いで!」
「ホンマや、この数って儂を応援してくれてる人やろ、こんなにも沢山居てるやなんて、こんな高齢者でもこんなにも愛されるなんて最高やん!」
「そらそうや!お父さんのギターって素朴な味してるし、唄も上手いし・・もしかして野鳥先生のお陰かもな?」
「いや、それは彼女のお陰や!」
「えっ、お父さん彼女居てたん?」
一瞬ドキッとしたが、Bm7の伝授を最後に今はもう現れなくなったギターの精霊、つまりギターの付属で付いてきた彼女のことだ。
私はギターにくっ付いて来たあの精霊女子の全てを、今こそ家内に話そうと決意した瞬間だった。
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