ずっと輝くあなたでいて

11/11
前へ
/11ページ
次へ
冬になり、ミュージカル研究会の公演が幕を開けた。 マイとタクミは観客として見に行った。 ずっと舞台に立っていたタクミは、ミュージカル研究会の公演を客席から見るのは初めてのはずだ。 (どんな気持ちで見ているんだろう) マイは時々タクミの方に視線をやり、横顔を見ては考えた。 ⁂ 「二人とも打ち上げに来てよ」 かつての仲間たちが、マイとタクミを誘ってくれた。 出演者たちは、タクミの感想とアドバイスが聞きたいようだ。 折角だからと、二人は打ち上げに参加した。 ⁂ 打ち上げは盛り上がり、二次会のカラオケにも一緒に行くことになった。 タクミは後輩たちに「歌って欲しい」とせがまれる。 「しょうがないなぁ」なんて言いながら、タクミはマイクを握った。 マイが、タクミの歌う姿を見るのは久しぶりだった。 新歓祭りの日、初めてタクミを見た日のことが鮮やかによみがえった。 (そうだった。タクミさんが一番輝くのは、歌っている時だった) 気づけば、マイの目から涙がこぼれていた。 タクミはカンパニーの誘いを断ったものの、気持ちは断ち切れないでいることを、マイは知っていた。 本当は先輩が新しく立ち上げるカンパニーで、演じてみたいのだ。 (タクミさんのことを一番よく分かっているのは、私じゃない) 帰り道で、背中を押そうとマイは決めた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加