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夏休みになった。
ミュージカル研究会は3泊4日の合宿を行うのが恒例。
「タクミさん、荷物が少な過ぎません?」
大きな紙袋を一つだけ持って現れたタクミに、マイは驚いた。
「寝坊しちゃってさ。朝、起きてから荷造りしようと思ってたんだけど、時間がなくて。仕方ないから、その辺にあった大きい袋に、とりあえず要りそうなものを全部、入れてきた」
紙袋なので、上は開いていて中が丸見え。
タオルもTシャツもパンツも歯ブラシも、小分けにしてポーチに入れるでもなく、ぐっちゃぐちゃに放り込まれていた。
タクミを見ていると、固定観念を崩される。
側にいると、マイは面白くて楽しくて仕方がない。
⁂
合宿2日目の夜。
枕が変わると眠れないタクミを、マイが散歩に誘った。
夜道を歩きながら、のんびりと話す。
たわいもない話がひと段落ついた時、マイは立ち止まった。
タクミはさらに3歩そこから進んで、遅れて立ち止まる。
振り返ったタクミに、マイが言った。
「私、タクミさんのことが好きです。つきあって下さい」
マイは合宿中に、どこかのタイミングで告白しようと決めていた。
本当は最終日の方が良かった。
だけど明日の夜は、朝までみんな、飲み会をやりそうな気がする。
そして、今夜はあまりに月明かりが綺麗だった。
告白をするんだったら、こんな月が出ている日だと思った。
「え?マイちゃんって、俺のこと好きだったの?」
あんなに分かりやすく態度に示していたのに、タクミは鈍い。
「ちょっとビックリしちゃって。返事は合宿が終わってからでいい?」
そして合宿の2日後から、二人はつき合い始めた。
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