ずっと輝くあなたでいて

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タクミの家に彼女として行くのは初めてで、マイは幸せいっぱいだった。 勝手に顔が、にやけてしまう。 部屋に入ると、以前にはなかったはずの書類の山に遭遇した。 その中に、大学の校章が入った葉書がある。 やっぱり、いつも目にしているマークには注意が向くらしい。 「大学からのお知らせって、メールで来ますよね?葉書が来るって、どういう場合なんですか?」 「大学から何か来てるの?ちょっと、何が書いてあるか見てくれない?ポストがあふれているのが見えたから、とりあえず全部、ごそっと部屋に持って入ったんだけなんだ」 マイは郵便物には目を通さないと落ち着かないタイプ。 放っておけるタクミを凄いと思いながら、葉書を読む。 「大学の図書館からです。借りた本を至急、返しなさいって。メールを無視するんじゃないって、怒ってますよ」 「本?返してない本なんてあるの?」 そこから、二人がかりの大捜索が始まった。 色んなものをかき分け、お目当ての本を探し当てるまで、3時間はかかった。 途中、思わぬものを目にして、マイは何度か小さな悲鳴をあげた。 本を探すのは肉体労働だった。 重い物も動かさなければ、その下を確認できない。 その夜、疲れたタクミはぐっすり眠っていた。 他人が部屋にいると眠れないはずのタクミの無防備な姿を見て、二人の距離が縮まったとマイは感じた。 ⁂ 翌朝、先に家を出たタクミは本を持っていかなかった。 鍵を預けてくれて嬉しかった気持ちは、置きっぱなしなの本を見ると、呆れる思いに変わってしまった。 (あんなに大変な思いをして、探し出したのに) 仕方なく、マイは本を自分のカバンに詰めた。 図書館へ行って、本を返す。 カウンター係に叱られるれることはなかった。 マイが延滞の本人でないことは、分かっているみたいだった。 だけど、しっかりと63円を請求された。 マイは図書館の本を延滞したことがない。 葉書で督促が来ると、郵送代を払うルールなんて知らなかった。 マイはケチではないが、手数料とか延滞料とか利子とか、手元に残らないものにお金を払うのはもったいないと思っている。 タクミのズボラな性格はよく分かった。 これからは、彼女である自分がしっかりしようと決意した。
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