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疑わしげな目をする煌夜に宵闇は断言した。どうにかして煌夜に信じてもらわないことには先に進めない。本当は二度とこんな台詞言いたくはないのだが、背に腹は代えられない。煌夜ならばこの台詞を忘れていないはずだ。
「……はあ、ならこう言えばお前は信じるか。『俺は従者なんていらない。どうしても俺を主としたいなら、跪いて俺が求める忠誠を誓え』……これは俺とお前しか知らない言葉だと思うが」
その言葉に煌夜は目を見開く。そして、一回だけ深呼吸をして言葉を紡いだ。
「それを言われたら、オレはこう答えないといけないな……。『主に対して跪くのに抵抗があるわけじゃないが、跪いた時点でお前の求める忠誠じゃなくなる。跪くのとお前が求める忠誠を誓うの、一体どっちを優先させればいい?』……この台詞懐かしいな。本当に、お前、宵闇……なんだな」
煌夜が宵闇を主としようとしたときの問答、これは煌夜と宵闇しか知らないもの。他の誰もが知るはずのない。煌夜の脳裏には未だに宵闇が死にゆく姿がこびりついて離れない。もう二度と会えないものだと思っていた。
どうして生きている。どうして姿形が変わっている。
聞きたいことは沢山あった。だが、何よりも真っ先に言いたい言葉がある。
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