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【第一部】第4章 怒涛の悲劇②
* * *
片膝を立てて木に背を預けたジオは深く溜め息を吐いた。
功を焦りすぎたという思いが彼の中でグルグルと廻る。
彼が追い求める真相の鍵と思われる宵闇を見つけたのは良いが、宵闇がいつジオの前から姿を消してしまうか分からない。ようやく全てを終わらせられると思ったのに、何の成果もなく逃げられるわけにはいかない。
だから直球で問いかけた。ジオの中に長年燻り続ける疑問を。それを問うたところで何が起きるかも分からないというのに、問わずにはいられなかった。
百五十年だ。百五十年もの間、ジオはたった一人で世界の真相を追い続けているのだ。もう終わらせてくれても良いだろうと、俯いて只々地面を眺めていた。
「お前でも悩むんだな」
「黙れ」
パキッと木の枝を踏む音がするとともに聞こえてきた声は懐かしくもあり恨めしくもあるものだった。
ジオは手負いの獣のように目の前の敵──レクスを警戒して牙を剥く。だが、その表情に覇気はない。レクスに対するジオの感情は酷く複雑であった。
「何でお前がここに」
「俺はクロに会いに来た」
クロ。それはレクスと会っていた青年の名。
血で汚れていた青年の。
そして、癖っ毛で長い黒髪の青年。
彼がこの近くにいる。レクスはそう言っているのか。宵闇に執着しているというクロという青年が。
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