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「帰ってきてくれて、良かった。おかえり、宵闇」
出迎えの挨拶。それは煌夜が目の前の彼を宵闇として本当に認めたということ。そこでようやく周りから殺気が消えた。同族の彼らは煌夜がどんな男であるのかをよく理解している。その彼が認めたのなら、例え姿形が変わろうとも彼は宵闇なのだろうと信じたのだ。
煌夜は扉から手を離してそっと横に移動して、宵闇に道を開ける。
「嗚呼、ただいま」
ようやく誤解が解けた宵闇はホッと息をつき、門をくぐった。そして煌夜の前を通り、靴を脱ぐ。下駄を履いていたはずなのに何故と一瞬思ったが、そういえば身体が変わると同時に衣服も全て変わってしまったのだと思い出す。ただ自分の家に入るだけのために物凄く時間がかかった気がする。
畳の上に腰を下ろすと、彼の前に煌夜が胡坐をかいて座った。煌夜の目はもう疑念を抱いてはいない。
「で、一体何があったんだ?」
「煌夜、とりあえず落ち着いて聞いてくれ。俺も正直言って今の状況をどう受け止めていいのか分かってないんだ」
今の状況が全て夢や幻であると誰よりも思いたいのは宵闇自身だ。厄介事が嫌いなのに巻き込まれてしまったことを全力で否定したいのにできない現状が憎い。
「ああ、分かった」
煌夜とて宵闇に聞きたいことは山ほどあるが、話を聞かないことには何も始まらないと思い渋々頷いた。
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