【第一部】第4章 怒涛の悲劇②

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「なあ、そのクロって奴がこの辺にいるのか」 「ああ」 「……宵闇もこの近くにいる」  レクスが目を見開く姿が視界に映る。  宵闇に危害が加えられるかもしれない。そう分かっていても、ジオは動くことができなかった。  あのとき、宵闇に問うたとき、返答次第では宵闇を手に掛けようとしていた。百五十年前というのはアレを経験したときだから。ただの偶然というには出来過ぎている。けれど、宵闇が嘘を吐いているようには見えなかった。だとすれば宵闇自身は本当に何も知らないのであろう。 「レクス……お前はこの世界をどう見る?」 「……存在しないはずの世界」  答えと呼んでいいのか分からない言葉を残して、レクスは彼の前から姿を消した。前に会ったときから、まだ一日程しか経っていない。けれど、レクスの中で既に答えを出したのだろう……だから彼は今、前に進んでいった。  レクスはクロに会いに行くと言った。宵闇に執着しているというクロに。ならば、彼もまたジオの望みを叶える鍵であろう。 「宵闇、クロ……全てを終わらせる鍵……」  疑問の答えを出して全てを終わらせると決めたのはジオ自身。その答えが何であっても受け入れる覚悟はできている。  ならば、こんなところで座り込んでいる場合ではない。  立ち上がって足を進めなければ。たとえどんな手を使おうことになろうとも、全てを終わらせたい。決意を胸にジオは宵闇に会いに行く。
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