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「そうだ……俺たちは、あるべき形に……本来〝存在しない〟ものを、消そうとしてるだけだ」
レクスの言葉にクロは身体を震わせる。
「駄目です。消しては、駄目です」
うわ言のようにブツブツと呟きながら、クロは扉に向かっていった。
背中から血が流れて、彼が歩くと赤い道ができていく。
レクスは彼を引き止めようと、痛みに顔を顰めながらも身体を動かす。だが、間に合わなかった。
クロは外に出て行った。
それとほぼ同時に、ジオとレクスは床に倒れ込んだ。血を流しすぎたのだ。身体が震える。感覚が麻痺してきて、だんだん痛みを感じなくなってきた。
「なあレクス」
「何だ」
おもむろに口を開くジオ。レクスとの因縁を思い返すと今此処に一緒にいるのが不思議で仕方がない。おそらくレクスも同じことを思っているだろう。
「結局、宵闇って何なんだろうな」
「さあな……けど、これで、全部……終わったら、良いな……」
それからレクスの声は聞こえなくなった。
お前のが先に逝くのかよ、と密かにジオは突っ込んだ。これほど血を流しても、まだ死なない自分の身体が憎い。感覚が麻痺して痛みは感じにくくなっているが、それでも痛いと感じる。
「……たぶん、もう……終わるさ……」
届かないと分かっていても、最後にレクスに向けて言葉を紡ぐ。
ジオとレクス。彼らは百五十年前に起きたアレを唯一覚えている者たち。ジオはそのときの記憶を思い起こす。
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