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「まず俺は本来死ぬはずだった。死に場所を求めて、お前と会った後、森に入ったのは覚えているな?」
「ああ」
煌夜が静かに相槌を打つのを確認して、宵闇は言葉を続ける。
「そこに湖があったんだ。そうしたら、湖の中に人の形をしたモノが沈んでいた」
「ちょっと、待て」
「良いから最後まで聞いてくれ。その正体を確かめに湖に入って、気がついたらこの身体になっていた」
途中で何かを言いたげな煌夜を遮って、この身体を手に入れた経緯を語り続けた。煌夜からの一体こいつは何を言っているのだというような視線に居たたまれなくなり、言葉を止めたくなるが言わないことには何も始まらない。
「そして、この身体はどうやら神のもののようだ。それから、俺にも何が何だか分からなくてとりあえずお前に会いに来た」
「……いや、オレにも何が何だがさっぱり分かんねぇよ」
素早く突っ込む煌夜。そして彼は頭を抱え始めた。厄介事嫌いなのに、何故か頻繁に厄介事に巻き込まれる主がとんでもない厄介事を引き連れてきたことを受け入れたくない。生きて帰ってきてくれたことは嬉しいのだが、その代償にあまりにも壮大すぎて自分たちには手に負えない何かを持って帰ってきたように思えて仕方がない。
それに宵闇の言っていることに違和感を覚えずにはいられない。何かがおかしい。彼の話は短すぎるのだ、時間的に。
「なあ、お前の話だと今さっきのことのように語ってるが……そもそもオレがお前と別れてからもうひと月くらい経ってるんだが……」
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