【第一部】第1章 宵闇の逢瀬②

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 ひと月。  煌夜の口から信じられない言葉が出てきた。  一度意識を失ってから再び意識を戻して湖を見つけるまでの間にそんな時間が経っているはずはない。あれだけの傷を負った状態でそれほど長い時間死なないわけがない上に、そもそもひと月も飲まず食わずではいくら人ではないとはいえ死ぬだろう。  森からこの村まで来るのにも一日くらいしか経っていない。ひと月も時間が過ぎるはずがないのだ。  一体、何処でそんなに時間が経った。いや、一つだけ宵闇には思い当たる節がある。  湖に入っていた時間だ。  宵闇は僅かしか経っていないと感じていたが、実際にはひと月もそこで過ぎ去っていたとしか考えられない。信じがたいことではあるが神の身体なんぞ手に入れてしまった時点で何が起きても驚けなくなっている。 「もう、わけが分からねぇよ。……けど、お前のその身体と、夜が来る回数が減ったのは何か関係がありそうだな」 「夜が来る回数が減った?」 「ああ。お前と別れた次の日から太陽が昇ってる時間が異様に長くて、たまに夜が来る程度だ。このひと月で八回くらいしか来てないんじゃないかな。そうそう、夜が来ねぇからだいたいひと月かなって感じなだけで実際にはよく分かんねぇ」  言われてみればこの村に来るまでに本来なら一度夜が来るはずなのに来なかった。あまりにも慌てていてそこまで気づく余裕がなかった。  それにしても、神の身体と夜の回数、一体何の関係があるのか。真っ先に浮かぶのがこの身体の本来の持ち主が夜を司る神で、その神がいなくなったから夜が来なくなったというものだが、全く来ないならまだしも回数が減るのは不自然だ。
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