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「お前はあの森に湖があること知っていたか?」
「いや、知らなかった。何度も行ってるんだけどな」
煌夜と同じように何度も森に足を運ぶ宵闇でも知らないものを知っている可能性は低かったが、やはり湖の存在は知らないようだ。ならば湖の水面に姿が映るかどうか聞くだけ無駄だ。頼みの綱を失ってしまった宵闇はどうしようかと首を傾げる。
「その湖とやらがどうかしたのか?」
「水面に姿が映らなかったから、元々そういうものなのか、お前に聞こうかと思ったが行ったこともないなら知らないだろう」
「残念ながら。姿が映らなかったってことは、お前今自分がどんな顔してるのか分かんねぇんだな」
振り返って煌夜は手鏡を探す。少し部屋の中を見渡していると、棚の上に置いてあるのを見つけて手に取る。宵闇の方に手鏡を差し出すと、宵闇はすぐに自分の姿を手鏡に映した。
「え?」
手鏡に映った自分の姿に宵闇は目を見開く。
所々外側に跳ねた長い黒髪。
何か白いモノが散りばめられた青い右目。
キラキラと輝く幾つもの光るモノが浮かぶ金色の左目。
光るモノが散りばめられた金色の瞳には見覚えがある。宵闇が慣れ親しんだもの、己の瞳だった。だが、右目は違う。一度も見たことがない。
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