【第一部】第1章 宵闇の逢瀬②

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【第一部】第1章 宵闇の逢瀬②

   * * *  森を東に進んでいくと小さな村が見えてくる。そこに鬼たちが住んでいる。建ち並ぶ瓦屋根の家屋の中から、煌夜の家もとい自分の家を探す。自分の家を探すのにそう時間はかからない。 「おーい、煌夜、いるか?」  家まで赴いて門の前で叫ぶ。煌夜からの返事はないが自分の家なのだから勝手に入っても問題はないだろうと門を潜ろうとしたとき、周りから殺気を感じた。このまま中に入れば誰かしら襲ってくるに違いない。宵闇はただ自分の家に入りたいだけ、無駄な争いをする気はない。 「誰だよ!」  怒鳴り声とともに勢いよく扉が開けられる。微かにバキッという音が聞こえたのは気のせいであると切に願う。壊したら直すのはお前だって分かっているだろ、と突っ込みたい衝動に駆られるが、グッと堪えた。今そんなことをすれば、周りの目が痛い。殺気と視線が宵闇に突き刺さって来る。 「……え? マジでお前、誰?」  扉に手を置いたまま、煌夜はきょとんとした顔をする。そんな煌夜の様子を見て、ようやく宵闇は気づいた。此処は小さな村、そして住人は皆鬼だ、長い時を生きる彼らは皆、顔見知り。知り合いのはずの村の住人たちがこんなにも警戒心をあらわにしているのか、その理由に気づいてしまえば、ほんの少し前の自分の迂闊な行動を呪いたくなる。
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