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「何か用でしょうか?」
「金髪にオレンジ色の目をしたセーラという少女を探しているのですが、ご存知でしょうか? ここら辺にいると聞いたんですが」
ライの問いかけに、澄んだ綺麗な声で少女は答える。金髪にオレンジ色の目、そう言われた瞬間にアスターは僅かに身体を強張らせた。名前は知らないが、先程会った少女も金髪にオレンジ色の目だった。もしかして彼女がセーラなのだろうか。
「セーラって子か分かんないけど、金髪にオレンジ色の目をした女の子なら宿屋に入って行ったよ。街の東にある宿屋に」
アスターは言うか迷う間もなく、スラスラと知っていることを全て話していた。嘘は言っていない。
あのときチハたちに会いに行き、そこで長い間話し込んでいた。その間チラリと少女を見たときに、青年と一緒に宿屋に入っていくのを偶々見たのだ。
「あー、けど、何か男の人と一緒だったけど……」
「そう彼女のが先に彼と会ったのね。きっとその子がセーラで間違いないわ。教えてくれてありがとうございます」
少女はぺこりとお辞儀して何処かへ向かって行った。その行き先はおそらく宿屋だろう。
「ちょっと、二人ともサボってないで手伝ってよね!」
怒鳴り声が聞こえた。二人は恐る恐る顔を横に向けると、チハが荷車の横からこちらを覗いている。ライとアスターは互いに顔を見合わせ苦笑した。二人は荷車から降りて荷造りの手伝いをし始めた。
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