【第一部】第3章 不穏の再来④

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「お前は人間か」 「うーん、俺らみたいな奴は呪術師っていうんだけどな。何ていうかまあ呪術師が人間かどうかは正直微妙なとこだな。人間の定義は何かによって変わってくるだろ」  酷く曖昧な答え。だが、腑に落ちる答えだった。ジオからすれば鬼とか吸血鬼とか呼ばれている宵闇も人間かどうか微妙な存在なのだろう。  それにしても呪術師の存在は初めて知った。宵闇とて世界を全て旅してきたわけではない。まだ彼が知らない存在がいるのかもしれない。 「けど、人ならざる者じゃないのは確かだな。あいつらは同族か否か分かるらしいが、俺を同族扱いしたやつはいないからな。まあ、他の呪術師ともちょっと違うから人間でもないのかもしれねぇけど」  意味もなくグラスの中身を揺らしながらジオは呟いた。瞳には影が落ちより一層不気味さを醸し出している。  宵闇はジオから目を逸らす。その不気味さに耐えきれなかった。この場にいてはいけないと彼の本能が叫ぶ。立ち上がると勢いをつけすぎたのか椅子が倒れる。 「どこか行くのか?」  ジオの問いかけに答えることなく、宿屋を出て行った。大体何であの場所にジオしかいないんだとか、宿屋の人間はどうしたんだとか、一気に疑問が沸き上がる。それがくだらないものだとすぐに気づいた。ジオしかいないのは偶々だろうし、宿屋の人間は奥で仕事でもしていたのだろう。 「なあ」  肩を叩かれて大きく身体が震える。振り返らずともそこにいるのが誰だが分かった。何故ついてきたと口にするより先に走り出した。
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