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澄んだ湖と綺麗な緑色をした木々。そして、空からは太陽の光が差し込んでくる。
しかし、美しい自然の風景に似つかわしくないものがそこにはあった。
赤い色が茶色の地面を染めていく。
「どうして」
震えた声が響く。
「すまない、──」
誰かに向かって謝っている。
だが、その名はノイズがかかってよく聞こえない。
何度も何度も「すまない」と謝る声が響き渡る。
視線が動く。
赤い色の中心へと視線が動く。
そこには、女の姿が。
癖のない真っ直ぐで長い黒髪が赤い色と共に広がっている。
「う、ああ、あああああああああ!」
悲痛な叫び声に合わせて木々が揺れる。
強い、強い後悔の念が押し寄せる。
恐怖で思考が埋め尽くさせる。
目の前で、強い光が発せられる。
霧散していく光を追いかけると足元に冷たさを感じる。
身体が沈んでいく。そして、意識が呑まれた。
暗い、暗い場所にユラユラと漂っている。
〝なあ。なあ、お前!〟
強く揺さぶられる身体。
聞こえてくる声。
意識が一気に浮上する。そして、視界が鮮明に。
「おっ、気がついたか! オレ、煌夜っていうみたいだけど、お前は?」
茶色の髪をした少年が笑みを浮かべながら訊ねてくる。
彼の背後には、散乱した瓦礫。
空には星が輝いている。
「……俺……俺は……宵闇。たぶん宵闇っていう名前」
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