わたしの推しが死んだ日

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「だって山田さん、もうすぐこのマンションから追い出されるんでしょう? 次の居場所が決まるまで……、ううん、好きなだけうちに居たらいいよ。駅から遠いしボロい木造だけど、まあまあ広いし、大家さんもいい人だしね。そのうち衣装部屋もいらなくなるから、そこを山田さんの部屋にしてさ。ご両親にも連絡して、通院もして。私これから給料が爆上がりするらしいから、2人分でもきっと余裕だよ」  いくら説明しても、山田まひるはきょとん、とした顔で首をかしげているばかりだった。  混乱しているのだろう。私も同じだった。自分の発した言葉を聞いて、一番驚いていたのは自分自身だ。  でももう推しとか神様とかじゃない、人間同士なのだから、と私はまひるをまっすぐに見つめ返す。  小泉夜乃は救えなかった。でも、今度は目を逸らさない。  山田まひるのことは、ちゃんと手を差し伸べる。  遠くでファンの歓声や拍手が聞こえたと思ったら、窓を激しく叩く大粒の雨の音だった。(了)
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