消された一番

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昼休み。 また僕は勝吾と場所の取り合いでケンカしていた。 「どけ!」 「嫌だ!」 「この台は俺が荷物置きに使うんだよ!」 「僕が最初に見つけたんだ! 今日先に着いたのも僕だ。僕が先に使うんだ!」 「わかってねえな! 勝負ってのは早さだけじゃないんだよ!」 そう言って僕を突き飛ばす。かちんときた。 「力でしか勝てないクセに!」 「なんだとこの野郎!」 「事実だろこの乱暴者!」 勝吾が顔を真っ赤にして僕の胸倉掴む。そして殴ろうとしたとき、 「やめなさい」 背後の声が勝吾の動きを制止した。 「「小山(こやま)先生」」 「勝吾暴力はダメだぞ」 声の主はクラス担任の小山先生だった。 爽やかな雰囲気と若々しい外見で僕のお父さんより若く見える。 先生は勝吾に注意する。 「どんなときだって暴力で解決するのは絶対やっちゃいけないよ。横取りも」 「だって夕輝が」 「夕輝は今日この場所に行くためにいろいろ頑張ってたんだぞ。給食の準備や早食いをしてね。早食いは感心しないが」 「先生……」 「頑張って人が手に入れたものを力任せに奪ってはいけない。そんなんじゃ黒帯はまだまだ先だな」 「そんなぁ~」 勝吾が頬をふくらます。 そういえば小山先生は柔道教室に通う勝吾にときどき柔道を教えている。 先生は柔道の黒帯を持っていて、昔クラスでも敵なしに強かったとか。 僕に向かって小山先生は微笑む。 「力だけではいけないと教えてくれた先生がいてね。その担任の先生おかげで先生は教師になったんだ」 「へえ」 正々堂々と。僕も負けられない。 「おい勝吾」 「なんだよ」 絶対発表会であっと言わせるような発表でみんな驚かせて、勝吾に勝ってやる。 「僕は絶対今度の発表会でお前に勝つ発表してこの切り株を手に入れてやるからな!」
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