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「ああ。そうやって支持者を巻き込んででも、我々を何とかしたかったんだろう。それで、人違いに気付いたら、奴らは事件をどう説明すると思う?」
「えっと……人違いでしたって言う訳にはいかないから……たぶん亡くなった方が反政府勢力だって嘘をつく?」
「うむ、その通りだ。しかし、それだけじゃないぞ」
「まだあるの?」
「ああ、街の人たちを巻き込むような爆発だからな。いくら敵を倒すためと言っても、政府がやったと発表すれば、支持者は……街の人たちは納得しない」
「なるほど。だから、うかうかしてると俺たちの仕業にされかねないんですね」
「その通り」
「え、でも”夜明けの虎”の人たちが知ってるよね? 僕たちがナフラを通ってないってこと」
「さっきの通信で『協力はしない』と言ってただろう? ものの見事に寝たふりをしていた」
「そういうこと。この時間に我々が通過したという証言は期待しない方が良いな」
「だから、一刻も早くアルファーダの市街地に入って、爆発した時間はナフラにいなかったというアリバイを作る必要がある……そういうことですね?」
「うん、満点回答だよ。さすが”監視者”くんだ」
「わかった。できるだけ早くアルファーダに飛び込むから、みんなしっかりつかまっててね!」
「ああ、頼んだよ」
ハキム師の言葉に相棒は力強く頷くと、思い切ってアクセルを踏み込んだ。
前方の2台も状況は理解しているらしく、月明りの中を二つの影がすさまじい勢いで左右に動きながら村に近づいていく。
ほどなくして山を下りきり、村の中を猛スピードで走り抜けた。
村の外側は度重なる戦乱で破壊され、草原の中にゴロゴロと瓦礫が転がる廃墟と化している。
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