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「追いつかれるでしょうか?」
一気に加速したせいで、窓から乗り出した半身に冷たい風が吹きつけてきた。
車内に問いかける声も風にかき消されそうだ。
「どうだろう。こちらは急斜面を下っているのに対して、あちらは平野だからな。道も広いし舗装されている。ナフラからマロナイトまで10km程度しかないんだ。既に出発していれば、あるいは」
「そんなにすぐに人違いに気付くとは思えませんが……」
ふもとのマロナイトからアルファーダまでは10㎞足らず。
山を下ってしまえばさすがに逃げ切れるとは思うのだが。
「追いつかれることも問題だがな。それより、濡れ衣を着せられかねない」
「おじさん、どういうこと?」
ハンドルを握りしめ、視線はまっすぐ前に向けたまま、相棒が疑問を挟んだ。
「交差点で爆発があったということは、遠隔操作型の簡易爆弾を使った可能性が高い。となると、場所が場所だけに、街の人にも被害が出ているかもしれない」
「そんな、あの街の住人は政府の支持者がほとんどだよね?」
むしろ、元々の住人を追い出して政府を支持するものだけが家や畑を奪って住み着いたともいえる。
つまり、街に被害が出るということは、彼らが自らの支持者に危害を加えたということになるが……
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