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「何とか逃げ切れるでしょうか?」
「わからん。とにかく病院に着くまで気を抜くな」
交差点まであと少し。幹線道路に出れば、後は病院のあるアルファーダまで一直線だ。
平野を貫く見通しの良い一本道。しかも、こまめに整備されているので走りやすい。
俺たちの乗っているおんぼろトラックは、型式こそ古いが実は平地ならスポーツカー並みの速度を出せる。
交差点を曲がって一気に加速すれば、そうそう追いつかれることもあるまい。
そう思った矢先のことだった。
はるか右……南の方で光が動いた。車のヘッドライトだ。
「来ました! ナフラ方面から車両2台……距離は約2000m」
「来るぞ! 急げ!!」
車内に告げるや否や、ハキム師が無線に指示を出す。
俺が車内に引っ込むと同時に更に急加速する車両。
じりじりしながら平原の中を突っ走ること数十秒。
あと百mちょっとで交差点……というところで、轟音と共に鉄の嵐が降り注ぎ、闇の中で炎の華が弾けた。
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