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「6時方向から攻撃! 各車、退避、退避! 少しでも身を隠せる場所を探せ!」
ハキム師が無線に怒鳴りつけると、先行する2台も路肩に退避していく。のろのろと窪地や岩陰に隠れてた後に、無線から《被弾なし》の報告が入った。
無事に難を逃れた様子にほっと息を吐く。
銃撃は続いていた。バックミラーが映し出す闇の中、遠くに発砲炎と思われる閃光が連続して瞬いている。漆黒の闇の中、次々と開く焔の花。
音から判断すると、おそらく1000m以上離れたところから撃っているのだろう。
連続して飛来する曳光弾に、ある特徴があることに気が付いた。
初弾の曳光弾から続いて2回、3回と飛来する曳光弾発は地表に水平に飛んでくるが、次に飛来する曳光弾と、それ以降の弾道は大きく上に逸れていく。
通常、曳光弾と曳光弾の間には、光を発しない普通弾が4~5発含まれている。目に見える曳光弾の数よりも、飛来してくる弾丸は遥かに多いはず。
つまり、敵は既に相当な量を発砲してきているが、命中弾は一発もない。
いくら遠方からの射撃とはいえ、ひどい集弾性だ。
「このばらけ方は……即製戦闘車両ですね」
愛銃に安全装置をかけながら相棒が言った。遠方からの攻撃のため、アサルトライフルの出番ではないと判断したのだろう。もちろん、攻撃を受けると同時に反射的に初弾の装填は済ませてる。
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