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「ハキムより各車へ。敵は後方約1000m、即席戦闘車両だ。武装は重機関銃、それ以上は分からん。距離がある今のうちに前進を再開しろ! 私はこのまましんがりにつく」
後部座席のおじさんが無線で指示を出し、助手席のグジムがライフルを片手に窓から半身を乗り出したまま後方を睨みつけた。
「それじゃ、敵は走りながら撃って来ることはないのかな?」
僕らの車はもちろん、先行している2台の車にも全く当たる様子はない。
暗視装置もないようだ。あればもっと当ててきているはず。
「そうだな、ただでさえ悪路に揺れるうえに、大口径重機関銃の反動だ。まともに狙いをつけることも難しいだろう。いいところ徐行で精一杯なはずだ」
「しかし、それならば何故ここで仕掛けてきたんでしょう?」
「あのルートからナフラ村を通らないならば、山を降りられるのはここだけだ。おそらく確実に通るはずの交差点を警戒していたところに、我々が現れて慌てて発砲した――そんなところだろう」
「なるほど。しかし、待ち伏せにしては稚拙な攻撃でした。まだ兵員を配置する前だったようですね」
「そのようだな。さもなくば、時速30km程度でしか走れない我々が今、無事でいるはずもない。創世女神の加護に感謝せねば」
「はい。いと気高き創世女神にみ栄えあれ」
おじさんと相棒のやりとりに、今すぐ撃たれることはないと判断した僕は、車をまた幹線道路に戻した。
仲間の検問所まではあと2km足らず。そこまで逃げきれれば僕たちの勝ちだ。
雪原の夜はまだまだ続く。前の2台も道路に戻って、スピードを上げたのを確認してアクセルを踏む。
その時、鈍い轟音が再び大気を震わせた。
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