樫杖の蛇【14】 イリム視点

1/3
前へ
/216ページ
次へ

樫杖の蛇【14】 イリム視点

 暗闇の中、ようやく山を降りて幹線道路に入ろうというところで敵の銃撃を受けた。  もっとも、1000m以上離れた場所からの遠隔射撃だったみたいで、弾はてんでばらばらに散ってる。きっと、きちんと兵員を配置する前に僕たちと出くわしたんだろう。  いったん銃撃が落ち着いたところで幹線道路に戻った。  逃げ切れそうだと思ったその矢先……  ズン……  お腹の底に響く音。続いて何かが大気を切り裂く鋭い音。 「なんでしょう? 狙撃にしては音が違う」 「ああ、これはおそらく……」  おじさんが言いかけたところでいきなり周囲が明るくなり、雪原に黒々とした車の影が落ちる。  バックミラー越しに覗くと、ゆらゆらと揺れながら舞い降りるまばゆい輝き。 「くそ……っ! 照明弾か」 「夜間の作戦だ、持って来ないわけがないな。今まで使って来なかったのは、追跡に気付かせないためだろう」  その割にヘッドライトをつけていたんだから、ちょっと抜けてるとは思うんだけど。 「来るぞ! 避けろ!!」  急ハンドルでまた荒地に。前の二台も同様に雪原に飛び込んだ。  同時に風を切る鋭い音。道路の上にまた焔の華が散る。  
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加