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「あと3分……3分だけ逃げきれれば……」
絞り出すようなおじさんの声。この人がこんなに焦った声を出すなんて……
いま僕たちが直面しているのは、そのくらい危険な局面なんだ。
そんな事態に僕たちが居合わせているのは、紛れもなく神様の思し召し。
照明弾に照らされてくっきりと見えているのは敵の姿だって同じはず……
だったら、僕のなすべきことはただ一つ。
――狙撃で敵を食い止める。
全部やっつける必要はない。
救急車が仲間の勢力圏に逃げ込むまでの3分間。その「たった3分」だけ、時間を稼げれば、それだけでいい。
――たとえ、僕が生き残れなかったとしても。
そう思い至ったら自然に身体が動いた。
座席下にあった愛用の狙撃銃をつかむと、するりと運転席から降りる。
何も言わなくても大丈夫、あの二人なら必ず分かってくれる。
だって僕が降りてもおんぼろトラックは止まることもふらつくこともなく、真っすぐアルファーダに向かっていく。
これでいい。
奴らは、ここで僕が食い止める。
僕は大地に伏せて銃を構えると、はるか彼方の車両に向かって引き金を引いた。
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