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樫杖の蛇【15】グジム視点
がちゃり
だしぬけに運転席のドアが開くと、相棒が傍らの狙撃銃をつかんで走行中のトラックから飛び降りた。
照明弾の強い光にくっきりと浮かぶシルエット。
ぱたん
何とも軽い音を立てて運転席の扉が閉まる。
俺も愛用の銃をつかんだまま、すかさず助手席の窓から飛び降り……ようとして、力強い手に足首をつかまれた。
いつの間にか運転席に移動したハキム師だ。
「駄目だ。君は残れ」
「しかしっ!」
振りほどこうとしても彼の手は万力のように強く、俺が渾身の力をこめてもぴくりともしない。そのくせ車体をブレることなくしっかりと走らせ続けているのだからただ者ではない。
この人の凄さを改めて目の当たりにして、思わずぞくりと身震いした。
「自分の任務を思い出せ。今は1秒でも早く救急車を無事にアルファーダに送り届けるのが先だ」
俺にとって何より大切な任務は相棒を守ること。
この国に来るずっと前から、俺が俺自身に課してきた大切な任務。
それは、隊長もハキム師もわかってくれていたはずなのに。
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