樫杖の蛇【16】イリム視点

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 雪原に転がる大小の岩を見渡して、窪地に転がる大きめの岩の陰に位置を決めた。周囲の岩を適当に積んで即席の銃座をこしらえる。  距離が遠い分、初弾は銃身がブレないようにしっかり固定しなくっちゃ。  地べたに伏せて、銃に弾をこめる。  かちゃり  軽い金属音と共に弾を弾倉に送り込むと、照準器をのぞきながらゆっくりと気息を整えていく。  敵との距離や、風向き、風速……  いつもはグジムが伝えてくれる数値を、今は一人で読み取らなきゃいけない。  彼の描いた軌跡をなぞって僕が撃てば、倒せない敵なんてどこにもいないのに……今は僕一人だけ。  また彼の落ち着いた声で、辿るべき道を示してもらうことはできるんだろうか?  まばゆい光球に照らされた黒いトラックの影を見据え、浅く吸い込んだ息をじっくりと細く細く絞って……  軽く呼吸を止めたところで周囲が闇に包まれる。  引き金を引きかけた指がぴたりと止まった。 ――くそっ、早く明るくなれ……  じりじりと待つこと数秒。  ズン……  再びお腹に響く音。5つ数えると周囲が明るくなる。  くっきりと浮かび上がる『敵』の影。  同時に引き金を引くと、自動車のタイヤがパンクしたみたいな、気の抜けた音がした。  闇を切り裂き飛んでいく弾丸。  敵の行く手を阻むために。
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