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雪原に転がる大小の岩を見渡して、窪地に転がる大きめの岩の陰に位置を決めた。周囲の岩を適当に積んで即席の銃座をこしらえる。
距離が遠い分、初弾は銃身がブレないようにしっかり固定しなくっちゃ。
地べたに伏せて、銃に弾をこめる。
かちゃり
軽い金属音と共に弾を弾倉に送り込むと、照準器をのぞきながらゆっくりと気息を整えていく。
敵との距離や、風向き、風速……
いつもはグジムが伝えてくれる数値を、今は一人で読み取らなきゃいけない。
彼の描いた軌跡をなぞって僕が撃てば、倒せない敵なんてどこにもいないのに……今は僕一人だけ。
また彼の落ち着いた声で、辿るべき道を示してもらうことはできるんだろうか?
まばゆい光球に照らされた黒いトラックの影を見据え、浅く吸い込んだ息をじっくりと細く細く絞って……
軽く呼吸を止めたところで周囲が闇に包まれる。
引き金を引きかけた指がぴたりと止まった。
――くそっ、早く明るくなれ……
じりじりと待つこと数秒。
ズン……
再びお腹に響く音。5つ数えると周囲が明るくなる。
くっきりと浮かび上がる『敵』の影。
同時に引き金を引くと、自動車のタイヤがパンクしたみたいな、気の抜けた音がした。
闇を切り裂き飛んでいく弾丸。
敵の行く手を阻むために。
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