樫杖の蛇【16】イリム視点

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 近付くヘッドライトに向かって迷わず撃つ。  ヘッドライトが一つだけ消えた。どうやらライトに当たったみたい。  小走りに移動して別の岩陰に。  それから息を吐きながらボルトを操作。  排莢。装填。閉鎖。  また息を吸って細く絞り。  軽く息を止めながら引き金を絞ってもう1発。  思い残すことは何もない……そう言ったら噓になる。  それでも、いつこの生命(いのち)が刈り取られても仕方がないくらいには、僕も誰かの生命(いのち)を刈り取ってきたのだから。  最期の時が訪れる、その瞬間まで。  戦って戦って戦い抜いて……少しでも効果的な死に方をして、仲間に最大の利益をもたらす。  そこまでが、戦士としての僕の役目だ。  機械的に引き金を絞り、前進して岩陰に身をひそめる。  ボルトを操作。排莢。装填。閉鎖。  呼吸を整えながら、近付いてくるヘッドライトの上を狙う。  パンパンにふくらんだ風船が割れるような音。  鋭い風切り音と共に飛び出した直径7.62mmの弾頭は、秒速800mの速さで標的へと突き進む。  ここは絶対に通さない……そんな僕の想いを乗せて。
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