谷間の杜松(ねず)【3】イリム視点

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 相棒(グジム)ははるか上空にいるヘリの鼻先を凝視している。機銃掃射の寸前、束ねられた銃身が回転するその瞬間を見極めようとしているのだ。 「来るぞ、右によけろ」  彼の言葉通りにハンドルを切ると、轟音とともに、おんぼろトラックのすぐ脇を機関銃の雨が通り過ぎる。大地がはじけ、土煙と共に大量の小石が巻き上げられた。 「次、左!」 「了解っ」 「今度も左」 「あいさ!」 「次は右だ」 「よっしゃ!!」  彼の指示に従ってハンドルを切ると、次の瞬間にはぐ脇の地面が激しくえぐられる。その度にバチバチと物凄い音が車内を駆け回って、これは銃弾が当たった音なのか、弾き飛ばされた石なのか、僕にはもう分からない。まだ生きてることが不思議なくらい、僕たちはめちゃくちゃに撃たれまくってる。  幸いなのは、ここが峡谷を縫うようにして走る山道だということ。こちらも走りにくいことおびただしいが、あちこちで両側に崖が迫って来るので、ヘリも入り込めず、高度を取らざるを得ない。高地仕様の最新型武装偵察ヘリだって、空を飛びながら動き回る車に弾を当てるのはそんな簡単じゃないみたい。  相棒のおかげもあってこのまま逃げ切れるかもしれない。
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