樫杖の蛇【16】イリム視点

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 先を進むヘッドライトが左右にぶれた。車体のどこかに当たったのかも。  一気にスピードを上げる3つの光点。かなり頭に血が上ってるみたい。  敵のいら立ちが伝わってくるようで、つい笑ってしまいそうになる。  僕の周囲に届く弾丸も増えてきた。  降り注ぐ銃弾の雨が雪と泥とを巻き上げる。 ――そうだ、こっちに来い。僕のところに。  そんなことを考えている間にも僕の手は止まらない。  排莢。装填。閉鎖。撃つ。前進。  排莢。装填。閉鎖。撃つ。前進。  同じ手順の繰り返し。ヘッドライトはどんどん大きくなる。  周囲に絶え間なく降り注ぐ鉄の嵐。  僕が引き金を絞るたび、ふらつくように光が揺れる。  排莢。装填。閉鎖。撃つ。前進。  また一つ、灯りが消えた。  もうお互いの距離は600m。  ライトの動きが止まった。  光の中にいくつもの影が浮かび上がる。何か指さして怒鳴ってるみたい。  車列より先に僕を始末するために、部隊を散開させてるんだろう。  多分あれが指揮官だ。  ためらうことなく腹のあたりを撃つ。  崩れ落ちる黒い影。  他の影がばらばらと動く。  動揺しているのか、復讐に燃えているのか……  あるいは、その両方か。
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