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くぼ地に潜んでこまめに位置を変えながら、一人ずつ撃ち抜いていく。
僕が引き金を絞るたび、数を減らしていく黒い影。
――いいぞ、僕を狙え……僕ならここだ!
そんな僕の心の声が聞こえたのだろうか?
さっきまでとは比べ物にならないくらい、激しく銃弾が降り注ぐ。
――来るなら来い。ここは絶対に通さないよ。
時おり激しく燃え上がるのは、機関銃から発射された焼夷榴弾だろう。
ゆっくりと動き出す車のライト。
いっそう激しくなる銃弾の雨。
もう位置を変えるどころか、頭を上げることすらできなくなった。
飛び交う怒号が聞こえてくる。だいぶ近付かれてしまったようだ。
「すぐそこだ! 例の狙撃兵だぞ!」
「必ず殺せ!!」
頭上で幽鬼のようにゆぅらり揺れる、白々とした光球。
人工の星がふぃっと消えた。辺りが暗がりに包まれる。
それでも銃声は止むことがない。いたるところで瞬く発砲炎。
暗闇の中、飛び交う怒号に低い獣の唸り声。きっと犬を放ったんだろう。
周囲にはばらばらと銃弾が降り注ぎ、いくつもの炎が立ち上ってはすぐに消える。
飛んできた銃弾が頬を掠めて目出し帽を切り裂いた。
――僕も、もうここまでか。
みんなは無事に検問所に着いただろうか?
グジム……ぜいたくを言うことが許されるならば、もう一度君に会いたかった。
どうか、僕の分まで生きてくれ……
そして、幸せに。
僕はベルトポーチから、とあるものを取り出し……
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