樫杖の蛇【16】イリム視点

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 くぼ地に潜んでこまめに位置を変えながら、一人ずつ撃ち抜いていく。  僕が引き金を絞るたび、数を減らしていく黒い影。 ――いいぞ、僕を狙え……僕ならここだ!  そんな僕の心の声が聞こえたのだろうか?  さっきまでとは比べ物にならないくらい、激しく銃弾が降り注ぐ。 ――来るなら来い。ここは絶対に通さないよ。  時おり激しく燃え上がるのは、機関銃から発射された焼夷榴弾だろう。  ゆっくりと動き出す車のライト。  いっそう激しくなる銃弾の雨。  もう位置を変えるどころか、頭を上げることすらできなくなった。  飛び交う怒号が聞こえてくる。だいぶ近付かれてしまったようだ。 「すぐそこだ! 例の狙撃兵だぞ!」 「必ず殺せ!!」  頭上で幽鬼(ジン)のようにゆぅらり揺れる、白々とした光球。  人工の星がふぃっと消えた。辺りが暗がりに包まれる。  それでも銃声は止むことがない。いたるところで瞬く発砲炎(マズルフラッシュ)。  暗闇の中、飛び交う怒号に低い獣の唸り声。きっと犬を放ったんだろう。  周囲にはばらばらと銃弾が降り注ぎ、いくつもの炎が立ち上ってはすぐに消える。  飛んできた銃弾が頬を掠めて目出し帽(バラクラバ)を切り裂いた。 ――僕も、もうここまでか。  みんなは無事に検問所に着いただろうか?  グジム……ぜいたくを言うことが許されるならば、もう一度君に会いたかった。  どうか、僕の分まで生きてくれ……  そして、幸せに。  僕はベルトポーチから、とあるものを取り出し……
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