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樫杖の蛇【17】グジム視点
照明弾と満月とに照らされた白い雪原を、車列は北に向かってひた走る。
周囲に落ちて来る銃弾が、徐々に車体にかすりそうになってきた。やはり視界が確保されたことで敵の射撃の精度が格段に上がっている。
窪地を選んで被弾面積を減らすようにはしているが、このままではいつ命中することか……
いや、そんなことにはならないはずだ。
イリムは……俺の大切な相棒は、そのためにたった一人で荒野に残ったのだから。
そう思った瞬間。
バックミラーに映る発砲炎。
微妙に位置を変えながら、チカチカ光が瞬いている。
戦っているんだ。自ら見出した使命を果たすために。
だったら俺も、使命を果たすのみ……救急車を無事に送り届けて、必ずお前を迎えに戻る。
闇の中、俺は改めて固く決意した。
息詰まるような時間が過ぎる中、車列は着実に検問所に近付いている。
はるか後方で激しい銃声がするものの、銃弾が周囲に届くことはなくなった。
相棒の奮闘が功を奏しているようだ。
あの暗闇の中、彼がたった一人で戦っている……
俺も一秒でも早く駆けつけて、その隣で戦いたい。
そしてついに、薄暗がりの中に友軍の即製戦闘車両が浮かび上がった。前方のトラックと救急車がその傍らに滑り込む。
すぐさま左右から飛び出した戦士たちが移動式バリケードで道を塞いだ。そのままバリケードの陰で武器を構え、待機姿勢を取る。
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