39人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここまで来れば、後は彼らに任せて良かろう。行くぞ!」
「はい!」
急ハンドルでUターン。ハキム師は一気にアクセルを踏み込んだ。
見る間に近付く銃火の光。
「まず私が奴らの即製戦闘車両を片付ける。君は散開している敵を!」
「了解っ!」
トラックが停車するのを待たず、助手席の窓から飛び降りる。
前方の闇の中で瞬く炎の群れ。
耳をつんざく銃撃の音。
猛々しい獣のうなり声。
あのただ中に、俺の大切なひとがいる。
今すぐにでも愛銃を乱射したい所だが、まだその時ではない。
もどかしさをおさえて、大地を蹴ってひた走る。
背後で次々に起きる轟音が6つ。
大気をびりびりと震わせながら俺の傍らを通り過ぎた何かは、前方の車両に突き刺さると同時に爆発した。
振り向かなくてもわかっている。
出発時に俺が積み込んだ携行対戦車ミサイル……
あれをハキム師がまとめてぶっぱなしたのだ。
「こんな事もあろうかと思って」
そう言えるほどには、ここまでの危機を正確に予測していた訳では無いが。
それでも「備えあれば憂いなし」と言ったところか。
最初のコメントを投稿しよう!